安保ウォッチング 

防災訓練と自衛隊

 「産経新聞」(8月18日付)は、「防災の日」、「統幕会議主導で机上演習ーー陸海空の一体化確立」との見出しで、9月1日に防衛庁・自衛隊が陸上、海上、航空の3自衛隊を「統合調整」する統合幕僚会議が初めて主導して、机上の「自衛隊統合防災演習」を行なう、と報じた。

 この演習のシナリオは「南関東に震度6程度の直下型地震が発生」するというもので、「防衛白書」によれば、防衛庁はすでに南関東地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)での大規模な震災が発生した場合に備えて、「南関東地域震災災害派遣計画」を策定している(99年版153頁)。さる6月25日の第15回重要事態対応会議で協議された大規模震災の際の対応も、「南関東直下型地震を想定した防衛庁の災害対策基本計画をもとに」行なわれている(「朝雲」7月1日付)。

 今回の「机上演習」の特徴は、なによりも統幕会議の主導により実施されることである。これは、防衛2法の改正により、統合幕僚会議議長の権限が強化され、今年3月にその改正防衛庁設置法が施行されたことを踏まえて実施されるものである。この防衛2法の改正は、新ガイドライン路線に沿った措置であり、大規模震災対処も新しい段階に入ったのである。今年の「机上演習」はそういうものとして実施されるのである。

 昨年までは「防災の日」に、陸海空の各幕僚幹部が別個に行なってきた机上演習が、今回は「統合演習」に格上げされたのである。

 東京・赤坂の防衛庁の中央指揮所で行なう演習には、藤縄統合幕僚会議議長をはじめ、統幕会議事務局、陸・海・空の各幕僚幹部から運用部門の幹部らが参加する。また、防衛庁内局幹部も参加することになっている。

 当日は中央指揮所、被害状況や各部隊の動きなどの情報を収集、分析して、統幕会議事務局を中心に、各部隊の派遣先や派遣方法、現場での部隊間協力についても調整することとしている。

 「南関東地域震災災害派遣計画」によれば、自衛隊は最大で人員8万人、航空機約280機、艦艇約50隻を派遣する計画である。今回は机上演習のみのため、現場部隊はこの演習には参加しない。「防災の日」に政府・自治体が実施する「防災訓練」には、今年も自衛隊の部隊を派遣するが、この部隊は「机上演習」とはリンクしない。

 石原東京都知事は、来年、このシナリオで実動演習を東京都が全面的に参加して行ないたいと表明している。どのような形でこれが行なわれるかはまだ未知数だが、その方向が打ち出されていることには注意が必要である。

 ガイドライン関連法での自治体協力について、石原知事は「ぼくは東京都知事かもしらんけど、都の施設で一旦緩急の際には防衛に必要なものは全部使ってくれって言うよ。自治体はやっぱり、命投げ出すぐらいの覚悟が必要ですよ」(「SAPIO 」8月25日・9月8日合併号)と公言している。

 「危機管理」の名のもとに、新ガイドライン路線が推進されようとしていることに目配りする必要があろう。

 

次回は 自衛隊のC4I 強化--業務計画案と概算要求にみる(9/15) お楽しみに。


         
         

松尾 高志


      

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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