安保ウォッチング 

「有事法制」と防災訓練

 防衛庁と東京都は、来年度に首都圏での大地震を想定し、陸上・海上・航空の3自衛隊が同時に連携して参加する初めての合同防災訓練を行なう方針を固め、協議を開始した、と「毎日新聞」(8月3日付夕刊)が報じた。東京都が石原慎太郎知事の意向を受けて、防衛庁に3自衛隊そろっての訓練参加を要請したもの、という。

 石原知事はさる7月25日のフジテレビ系の報道番組で来年の防災の日の9月1日に、都が自衛隊と合同で防災訓練を実施したいとの考えを表明していた。その際、「今年中に机上演習は実施する。(自衛隊の)東部方面本部が作っている案もあるらしいから、それをみせてもらってやろうと思っている」と述べてもいた。

 実はこのプランは、前回の自衛隊高級幹部会同の前日(7月14日)に、石原知事と小渕首相、中曽根元首相が都内の料亭「福田屋」でおこなわれた三者会談で持ち上がったもの。時節柄、地震の話だけではないとの認識が一般的だが、中曽根元首相によれば会談のポイントは東京大震災対策だったとされている。

 一方、防衛庁も今、地震防災対策の検討に改めて着手しはじめた。6月25日に開催された第15回目の重要事態対応会議(議長・野呂田防衛庁長官)では、大規模震災に際しての防衛庁・自衛隊の対応の検討を開始した。この日の会議では、野呂田防衛庁長官に防衛庁・自衛隊の「対処計画」などを説明、あわせて検討課題を列挙してその対応を協議した(「朝雲」7月1日付)。

 この結果、(1)出動部隊の宿営場所や臨時ヘリポートの確保、(2)被災者を手当てする野外病院の設置手続き、(3)ヘリなどの航空機の運行統制、(4)通信周波数の割り当て、などが検討課題として挙げられた。

 防衛庁では、長官の指示に基づき、これらの検討課題について法的な側面を含めて関係省庁との調整を進めることとなった(同)。

 何故、今、防災なのか?

 「読売新聞」(7月20日付)は次のような注目すべき記事を掲載した--

 「もとより防衛庁には、東京大震災対策を通じ、「アンコ(=有事法制)は難しいので、皮(=震災対策)の部分から先に考えよう」というしたたかな戦略ものぞく」。

 7月27日に発表された「防衛白書」(99年度版)は、「有事法制」についての記述を新たに「武力攻撃に備えるための体制」という新しいタイトルのもと、また、これまでと記述の場所を変えて、「有事」の際の自衛隊の戦闘行動の解説のすぐ後に置き、新たな位置づけをした。

 また内容も、これまでの「法制化するか否かという問題は高度の政治判断に係わるものであり、国会における議論や世論の動向を踏まえて対応すべきものである」との記述を削除して、新たに「これらの法制は、防衛庁の所掌事務の範囲を越える事項も含まれていることから、研究にあたっては、政府全体で取り組むことが必要と考えている」と「有事法制整備」の方向に具体的に踏み込む記述としたことに着目する必要があろう。

次回掲載「防災訓練と自衛隊」(9/5)


         
         

松尾 高志


      

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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