石原東京都知事の訪台の狙い
石原慎太郎・東京都知事が11月13日から15日に台湾を訪問したことが、波紋をよんでいる。
1972年の日中国交正常化以来、初めての東京都知事の公式訪問であったうえ、李登輝・台湾総統との14日の会談で、石原都知事が台湾を「中華民国」と呼称しつつ「中華民国は日本の周辺国家である」と発言したことが、中国(中華人民共和国)をいたく刺激したからである。
この点については、台湾を「国家」としたことと同時に「周辺」国家としたことに注目したい。新ガイドラインの「周辺地域」と重ねあわせていると思われるからだ。
しかし、ここでは、石原都知事の台湾訪問で問題化されなかった重要なモメントについて、注意を喚起したい。
それは「地震対処」である。
石原都知事は台湾訪問の前日の12日に、元陸上自衛隊北部方面総監(元陸将)である志方俊之・帝京大学教授(63)に「防災対策の専門家として」(自衛隊の事実上の機関紙「朝雲」11月18日付)、都の参与として委嘱した。参与は都知事に助言・補佐する非常勤の特別職である。元自衛隊幹部が自治体の防災対策の幹部として関与することは神奈川県についで、2人目となる。
石原都知事は委嘱状を手渡した後、「志方氏は都の防災分野での施策について考えてもらう。期待しています」と語り、これにたいして志方氏は「防災の分野で知事の考えを確実にするため補佐させていただきます」と述べた。
そして、石原都知事は台湾を訪問して、直接に地震の被災地を視察するパフォーマンスを繰り広げた。これが訪台の目的だったのである。石原氏は「東京の場合を想定して非常に参考になる所があった」とフジテレビの報道番組で語っている。
一方、志方氏は「(防災対策では)国家組織である自衛隊の活動も期待されている。自衛隊と都とは直接のつながりはなく間があるが、その間を縮められたらと思う。都には防災の設備があり、人員もしっかりしており、自衛隊には訓練で培ったノウハウがある」として、「これらを実際の場で有効に機能できるような訓練をしてみたい」(「朝雲」同)と語っている。
この「訓練」とは、石原都知事が自衛隊と協力して計画している来年9月3日に実施を予定している大規模地震対処訓練のことである。自衛隊の統合幕僚会議議長の権限強化のひとつとして、大規模地震対処についても、統合幕僚会議議長が関与することとなったことを受けて、今年の9月には自衛隊は南関東直下型地震を想定した大規模地震対処についての陸、海、空自衛隊の統合による「指揮所演習」を実施した。来年は東京都と協力して、これを踏まえて「実動演習」を実施することにしているのである。
石原都知事の台湾訪問はこうした文脈で把握することが必要であろう。軍事力をバックボーンとした「危機管理体制」の構築を目論んでいるのである。 |