日本有事単独の作戦計画はない
             ――小泉内閣の政府答弁書(03/3/25)

 さる3月14日、政府は小泉参議院議員(共産党)が提出していた「日米防衛協力のための指針の検討状況等」についての質問主意書に対する答弁書を送付した。これは質問主意書でも「有事法制案とも密接に関係する重要問題」であると述べているとおりであることから、若干の分析を試みてみたい。
 第一は、自衛隊と米軍のオペレーション(軍事作戦行動)にかかわることは一切が秘匿されているということである。答弁書はこう述べている――「『計画についての検討』の具体的な内容については、これらが緊急事態における我が国及び合衆国の対応振りにかかわるものであり、事柄の性質上、答弁することを差し控えたい」。ここで言う「計画」とは「ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」で規定している「武力攻撃事態」における「共同作戦計画」と周辺事態における「相互協力計画」のことであり、現在、日米両軍部で「検討」作業を継続している作戦計画のことである。こうした表現は今回の短い答弁書の中に4回も登場している。
 次に、国会で中谷防衛庁長官(当時)が認めた2001年9月に在日米軍副司令官と統合幕僚会議事務局長とが署名した文書は、「単一の文書なのか、それとも複数の文書なのか」との質問に対しては直接に回答することは避けて、答弁書は「計画についての検討」作業は「我が国に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討と周辺事態に際しての相互協力計画についての検討の双方を含むものである」と述べるにとどまっている。
 第三に指摘しておくべきことは、答弁書が「『計画についての検討』に当たっては、お尋ねの『地方自治体や民間の協力』に関するものを含め、指針に示された事項が適切に反映されるよう配慮することとなっている」として、「地方自治体や民間協力」が作戦計画の中に含まれていることを明らかにしていることである。
 このことは、すでに作戦計画のレベルではこれらのことは折り込み済みということで、周辺事態にあっては周辺事態法で、また武力攻撃事態にあっては現在進行中の有事法制で、このことを実現するための法的手段を整備しようとしていることを示している。
 第四は、質問主意書が「日米ガイドラインは、『日本への武力攻撃が単独で生起する場合』、『周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する場合』、『両者が同時に生起する場合』の検討が行われることになっている。(1)今回の合意には、これらすべてが含まれているのか、(2)『日本への武力攻撃が単独で生起する場合』は含まれているのか、(3)周辺事態と日本への武力攻撃が同時に生起する場合は含まれているのか」との質問事項に対しては、次のように回答している――「指針においては、我が国政府及び合衆国政府は、共同作戦計画についての検討と相互協力計画についての検討との間の整合を図るよう留意することにより、周辺事態が我が国に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合又は両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るようにすることとされており、『計画についての検討』についてはこれを踏まえて行っているところである。また、我が国に対する武力攻撃が単独に生起するような場合にも適切に対応し得るよう配慮することとなっている」としている。
 これは「日本単独有事」については両計画のセットにおいての「配慮」事項となっており、そのための作戦計画は単独では存在していないことを示している。言い換えれば、日米両国政府は常にアメリカ軍がアジア太平洋地域で遂行する戦争事態とのリンク以外は想定しないということである。有事法制のもつ意味がいっそうはっきりしたと言えよう。
 最後に調整メカニズムについて、日米共同調整所は「平素においては」「準備しておくものであって、『緊急事態』に際して運用が開始されることとなるものである」と初めて明示した。
 「ガイドライン」については、軍事機密が多く、その実態が国民の眼から見えない構造になっている。実態のいっそうの究明が必要である。

 

03/3/17記
松尾 高志

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
平和新聞の購読希望者は03(3451)6377までお問い合わせください。


HOME | 安保ウォッチング | 平和のための戦争展 | 鎌倉市平和委員会 | 平和資料 | ゲストブック

peace-kanagawa.org
since 1999.5.7