有事法制問題の分析(2)(02/4/15)


 政府が4月3日の与党3党の国家緊急事態法整備協議会(座長・山崎自民党幹事長)に提出した内閣官房のペーパー=「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案(仮称)」によって、「有事」の際の「国家戦争指導体制」の概要が明らかとなってきた。


 この法律案の示している重要な内容の柱の一つが、自衛隊と米軍による「共同作戦計画」にもとづくオペレーション(戦争である)を政府・地方自治体・公共機関が全面的にバックアップする国家戦争指導体制の構築にあることである。


 ここにおけるキーとなる組織体は強化された安全保障会議と「有事」に臨時に設立される「武力攻撃事態対策本部」の二つである。この両組織体のヘッドがともに同一人物たる内閣総理大臣であることが重要である。行政改革によって、内閣法4条が改正され総理大臣に閣議への発議権が明記されたが、今回これがストレートに活用されるに至っていることに注目する必要がある。というのは、「有事」の際に強化された安全保障会議からの諮問を受けて、総理大臣は閣議に「対処基本方針」という極めて抽象的な文書をかけることが可能となった。ここに総理大臣のヘゲモニー(指導性といってもいい)の強化が顕現されている。


 さらにそれに加えて、閣議がいったん、その「対処基本方針」を閣議決定してしまえば、内閣総理大臣はその後の戦時行政については内閣法6条の規定を事実上、バイパスして(いちいち閣議決定をへることをしないで)、各省庁に対して「総合調整」権限と「指揮」権限を発動することができ、さらに地方自治体、公共機関に対する「指示」権限を発動ができることとなっているのである。加えて地方自治体、公共機関がこれに従わずに実施されないときには、内閣
総理大臣は自ら対処措置を「実施」することができ、また所管大臣を「指揮」して実施させることもできることとしている。まさに「大統領的」首相の出現である。


 「有事」(戦時)における、非日常的な、国家指導権限を行使することが可能となる国家システムが構築されるのである。これこそが「戦争を遂行する国家システム」であると言うほかはない。


 もう一つの重要な柱は、強化された安全保障会議の補佐機関=「事態対処専門委員会」(委員長:内閣官房長官)の主要なメンバーが、自衛隊と米軍との共同作戦行動を円滑に遂行するための「調整メカニズム」における「日米政策委員会」のメンバーと重複しており、その下での「合同調整グループ」(「ガイドライン・タスクフォース」及び「運営委員会」)のメンバーはそれらの部下であり、直結していることである。「有事」であるから、自衛隊は米軍と共同作戦行動を展開する。その際に軍事レベルでは「日米共同調整所」で作戦の調整が実施され、また、政府レベルでは上記の機関が政策調整を実施するのである。これを構成する主要メンバーが安全保障会議の「事態対処専門委員会」のメンバーと重複しているのである。両者がリンクして、内閣総理大臣を介して国家システムを運用することになるのである。その推進軸が日米両軍部であることはいうまでもない。はじめから日米共同作戦なのである。


 ペーパーが「基本理念」の項目において、わざわざ「日米安保条約に基づいて米国と密接に協力」すると明記しているのはこのためなのである。


 この国家戦争指導体制は現在の法の段階でいうと、平時と有事のグレーゾーンにあたる「重大緊急事態」(安全保障会議設置法)から稼動しはじめ、「国防事態」(安全保障会議設置法)にあたる「防衛出動待機命令」下令事態(自衛隊法)、そして「防衛出動命令」下令事態(自衛隊法)に連続的にシフトしていく構造となっているのである。


 こうした戦時国家指導体制の構築がなされようとしていることを見逃してはならない。新ガイドラインと今回の「有事法制」の問題を全体として把握することの重要性を強調しておきたい。




                

02/4/4記
松尾 高志

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
平和新聞の購読希望者は03(3451)6377までお問い合わせください。


HOME | 安保ウォッチング | 平和のための戦争展 | 鎌倉市平和委員会 | 平和資料 | ゲストブック

peace-kanagawa.org
since 1999.5.7