自衛隊の東チモール派遣の意味するもの(02/3/25)


 東チモールへの自衛隊PKO部隊の展開がはじまった。


 この部隊の名称は第1次東チモール派遣施設群で、昨年12月に改正されたPKO(平和維持活動)協力法にもとづく最初のケースである。規模は過去最大の680人。これに加えて司令部要員10名も派遣される。陸上自衛隊北部方面隊からの派遣である。3月2日に先遣隊が千歳基地(北海道)から航空自衛隊のC―130輸送機で出発した。4月中旬から下旬にかけて任務を開始する予定である。派遣先は首都ディリに約330人、国境沿いのマリアナ、スアイ、飛び地のオエクシにそれぞれ1個中隊(約110人から120人)が分かれて駐屯することとなる。任務は施設部隊(工兵隊)であることから、道路の補修、橋梁の維持補修が中心である。


 今回、法改正された部分が適用されるのは武器使用基準の緩和部分であり、「自己の管理の下に入った者」にまで防護の対象が拡大されている。持参する武器は拳銃102丁、小銃568丁、機関銃10丁と、これも過去最大規模である。防衛庁では交戦規則(ROE)である部隊行動基準を定め、これにもとづいて部隊が武器使用することとなる。


 東チモールは「大東亜戦争」時に旧日本軍が軍事占領したところであり(1942年2月20日にディリに侵攻後、約3年半の期間)、「ロームシャ」や「イアンフ」が現地語として残っているほど強制労働や従軍慰安婦の体験を持つ人々がまだ多く生存している。先遣部隊の第1陣がディリに到着した3月4日にはディリ空港前では日本の戦争責任を追及する地元の市民団体約30人が抗議行動を行っている(「毎日新聞」3月4日付・夕刊)。


 防衛庁では東チモールへの自衛隊派遣を次のように位置づけている、と「朝日新聞」(3月12日付)が報じている――

(1)日本が「東チモールの安定は東アジア全体の安定の課題」とみなしているというメッセージをオーストラリアやインドネシアに送る、

(2)インド洋に抜ける周辺の海上交通路の安全確保につながる。


 また、注目すべきことは、防衛庁幹部が「アジアでのPKOを通じてアジア諸国と「協業」の経験を積むことになれば、安保政策の上でも意義がある」と語っていることである(同上)。


 このことは特に韓国との「協同作業」を意味している。というのは、飛び地のオエクシの治安維持にあたる歩兵部隊を派遣しているのが韓国であり、自衛隊は韓国軍と同じエリアで「協業」することになっているからである。自衛隊からは韓国語通訳の隊員2人を派遣するほか、同地に駐屯する中隊の隊員にも韓国語の日常会話の特訓をほどこしたという。また相互交流の行事も計画されているとのことである。ワールド・カップの日韓共同開催と時を同じくして、南洋においても日韓PKO共同作業が展開されることとなる(「朝日新聞」・2月28日付)ことの意味はけっして小さくない。


 まさに「新ガイドラインPKO」の実現である。


 さらに、これに先だって、2月20日から22日にかけて、自衛隊は統合幕僚会議の作戦担当と兵站担当の幕僚各1人(計2人)をアフリカのタンザニアで実施されたフランス軍主導の「タンザナイト」訓練(多国籍訓練)にオブザーバーとして派遣した。


 自衛隊は「対テロ」戦争に参戦しつつ、東チモールでのPKO派遣を同時に実施しているのである。そして、国内では、こうした海外に、海外に展開する自衛隊の作戦行動の「地固め」の意味をもつ「有事法制」の法制化を推進しようとしている。これらの事象を一体のものとして把握することが必要であると考える。



                

02/3/15記
松尾 高志

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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