米中枢同時テロを考える(01/9/25)
9月11日は歴史的な日として記録されることとなるだろう。 この日の午前(日本時間、夜)、アメリカの経済・金融のシンボルである110階建の世界貿易センターのツインタワー(ニューヨー
ク)と、軍事中枢であるペンタゴン(ワシントン郊外)が、ハイジ ャックされた旅客機によって、自爆攻撃され、破壊された。ほぼ同 時刻にハイジャックされた旅客機は4機、うち1機は途中で墜落、
テロ未遂である。
事件直後、全世界に展開する米軍には最高度の警戒態勢(フォー ス・プロテクション・コンディション=デルタ)が発令された。 在日米軍もその例外ではなかった。
自衛隊は自衛隊員を非常呼集して最高度の「自隊防護」の態勢に 入り、事実上の治安出動待機命令下に置かれた。警察庁も在日米軍 基地・米関連施設に対する高度の警備態勢をとった。
この事件はこれまで経験したことのない新しい事態であったことは確かである。
事件のため1日順延して12日に開会された国連総会の冒頭、緊急に安全保障理事会が開かれ、全会一致でテロを非難し、「国連憲 章に基づく責任にしたがって、あらゆる形態のテロとたたかうため、
必要なすべての措置をとる用意がある」との決議を採択した。国家として、このテロにたいして好意的な態度表明をしたのはイラク1 国だけであった。
ブッシュ米大統領は当初はこれを「テロだ」として、犯人を逮捕 ・処罰するとの声明を発出したが、「単なるテロを超えた戦争行為 だ」との態度にシフトした。事件から3日が経過した14日になっ
て、ブッシュ米大統領は正式に「国家非常事態」を宣言し、15日 にはキャンプ・デービット山荘で国家安全保障会議を開催して、 「新しい戦争」をどう遂行するかというオペレーション・プランの
策定作業を開始している。
15日早朝のラジオ演説でブッシュ米大統領は「これはこれまで とは違った種類の敵に対するこれまでと違った種類の戦争( conflict)となるだろう」との認識を表明している。この演説に先
立って行われた記者会見ではブッシュ米大統領は「我々は戦時下に ある。戦いは必要な限り続く」と述べ、パウエル国務長官は13日 に「これは長期間の戦争(long-term
conflict)となり、多くの前 線――軍事、諜報、法執行、外交の諸前線での戰いとなるだろう」 と述べている。軍事作戦について、15日の会議後、フライシャー
大統領報道官は「大統領はあらゆる選択肢を排除しない」と述べ、 地上軍の投入もあり得ることを示唆している。ペンタゴンは今後の 軍事行動に関する事項については一切「ノーコメント」である。
考えるべき問題は、これまでの経験則によれば、テロに対しては 司法対処(犯人逮捕、裁判による処罰)が原則であり、軍事攻撃な らば軍事対処(武力行使)であるのだが、この点でアメリカ合衆国
の対応は「新しい戦争」だとの認識で対処しようとしていることで ある。
ペンタゴンは「国防」概念を、近時、大きく変更しつつあり、こ れまでの「戦争」概念では対処できないとして、大量破壊兵器の拡 散阻止・対処、テロ対処を大きな柱として打ち出そうと動いてきて
いる。このプロセスで、この事件が発生したのである。
複雑な問題に簡単な解答はないことは確かである。衝撃的な事実 をつきつけられている今、重要なことはロジカルに思考することで ある。日本国のプリンシプルはテロにも戦争にも加担しないという
メッセージを世界に向けて発している世界史上最初の国家基本法に あるということにある。ロジカルに思弁を駆使して、複雑にいりく んだ世界情勢を分析し、みずからの態度決定をすることが求められ
ているのではないか?
今ほど「グローバルに考え、ローカルに行 動する」というスタンスが必要な時はないと考える。
01/9/17記
松尾 高志
この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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