01年度版「防衛白書」の示すもの(01/7/25)

 防衛庁は7月6日、閣議で「防衛白書」(正式名称「日本の防衛」 )を報告、閣議了承後、発表した。

 今回の白書は21世紀初めてのものであるとのことから、初めて副題――「21世紀の精強な自衛隊を目指して」を掲げ、単に「戦える自衛隊」から踏み出して、戦いにおいて「精強な自衛隊」像を目標に打ちだすにいたった。

 全体として、今回の白書はブッシュ=小泉新体制の下で、「新ガ イドライン路線」を積極的、能動的に推進する姿勢を示すものとなっている。

 第一に指摘しておくべきことは、「アーミテージ・ナイ・レポー ト」で示された集団的自衛権の行使について、これまでのスタンスの変更を示唆していることである(第2章)。それは、2点ある。 一つは、集団的自衛権についての記述そのものには変化はないが、 脚注で「現内閣の考え方については資料7参照」として、「集団的自衛権の問題について、様々な角度から研究してもいいのではないかと考えている」との小泉内閣で初めてスタンスの変更を示した 「答弁書」を資料として掲載したことである。二つ目は「防衛庁・ 自衛隊をめぐる憲法上の議論」との新設のコラムで、国会の憲法調査会の中で「集団的自衛権を保持していること又はその行使ができることを憲法に明記することの是非」について議論が行われていると明記したことである。

 第二に指摘しておくべきことは「有事法制」についてである(第 4章)。前年度の白書のタイトルでは「研究」としていたものを今年度では「取組」と変更し、これまでの記述に新しく「今後の取組」 との文章を追加したことである。追加された文章は森前首相と小泉首相が国会での演説で「検討を開始する」「検討を進める」とそれぞれ述べたことを起点として、すでに実務レベルで「検討作業」が 開始され、行われていることを「既成事実」として記述している。

 付言すれば、この記述の後に、「部隊行動基準の策定に向けた取組」との新しいタイトルで、「交戦規則」(ROE)の作成作業が開始されていることも「既成事実」として記述している。

 さらに、新しいこととして、「沿岸・重要施設の警備などへの対応」において、「法整備の検討」を打ちだしていることを指摘しておく(第6章)。それは「不審船や武装工作員などの不法行為について」、「自衛隊が有効に対処するために必要な法整備についても検討を進めている」と述べていることである。これは内閣官房が事務局になって関係省庁で検討しているとしている。このことを文書で防衛庁が示したのはこの白書が初めてではないか。

 第三は、新しく「これからの防衛力整備――新たな時代に対応した防衛力の整備」との章(第3章)を起こし、新中期防の内容を盛り込んでいることである。新ガイドライン合意以後で初の中期防となる軍拡計画について、特に章を新たに立てて「新ガイドライン路線」の推進を強く印象づけている。

 第四に、これとの関連で、「わが国の防衛と日米安全保障体制に関連する諸施策」(第4章)で、「ゲリラや特殊部隊による攻撃など各種侵略形態に対処するための作戦」(第1節)を追加し、また 「情報通信技術(IT)革命への対応」(第2節)、そして「弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究」(第4節)の記述を新たに節を立てて掲載している。この新しい節の二つはブッシュ米大統領が積極的に推進しようとしている新戦略の柱とも重なるもので、防衛庁が「軍事における革命」(RMA)を推進しているペンタゴンに追随する姿勢を鮮明に示すものとなっていると言えよう。

 さらに、今年度の白書は初めて「多国間共同訓練」について、コラムを含めて2ページにわたって記述している(第5章)。ここで は米太平洋軍が推進しようとしている多国籍演習について、これまでのオブザーバー参加から脱皮して、「訓練自体についても、憲法・法律との関係を整理しつつ、わが国有事への対処を念頭を置いた 訓練とのバランスなどを勘案した上で、可能であれば参加することが望ましいと考えている」と積極的な姿勢を示している。

 最後に、白書は今年初めて、「秘密保全に対する取組」を取り上 げ、昨年の海上自衛隊幹部の秘密漏洩事件後の防衛庁の秘密保全の強化対策を記述して、「さらに、防衛庁は、再発防止策の一環として自衛隊の保有する重要な秘密を漏えいした一定の者を対象とする罰則の新設について検討を行っている」と記述している(第6章)。 ブッシュ政権が「パワー・シェアリング」を求めてきているが、その際、「インフォーメーション・シェアリング」が不可欠となるが、 そのためには日本の秘密保護体制の強化が当然のこととして求められてくることは自明のことがらであり、その布石として自衛隊の秘密保全体制の強化がはかられていると言えよう。

 白書は冒頭の「国際軍事情勢」(第1章)に「軍事的視点から見た世界」とのサブタイトルをつけているが、このような世界の見方からは軍事的な対応しか出てこないのであって、軍事合理性という角度からしか世界を見ることのできない視野狭窄から導き出されてくるものは軍事力依存路線以外ないことを示している。憲法の視座から世界を見ることがますます重要となってきており、憲法の平和原則を破壊するものとの闘いがますます重要な時代になっていることを「白書」は示していると言えよう。

 

               松尾 高志
2001.7.16記

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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