有事法制の検討開始か(01/2/15)

 「有事法制に意欲」――「産経新聞」(1月31日付夕刊)は一 面トップでこの見出しをたてて、森首相が第151通 常国会の冒頭に衆参両院本会議で行った施政方針演説を報道した。

 該当箇所で、森首相は次のように述べていた――

 「有事法制は、自衛隊が文民統制の下で、国家、国民の安全を確保するために必要であります。昨年の与党の考え方を十分に受け止め、検討を開始してまいります」。

 当初の演説草稿では昨年9月の所信表明演説の「与党の考え方を十分受け止めながら、政府としての対応を考える」との表現にとどめる方向だった。防衛庁などが作成した草稿段階には「検討開始」の文言はなかった(「読売新聞」・2月1日付)。しかし、1月2 9日の最終の検討会で福田官房長官が「このままでいいのか」と問い、安倍官房副長官が「もっと踏み込むべきではないか」と提案し (「朝日新聞」2月3日付)、最終的には首相官邸が「政治主導で入れた」(官邸筋――「読売新聞」前出記事)ものだという。

 「時代が私にやらせている」、森首相は周辺にこう語っていると報じられており、首相周辺は「今度は本気だ」と強調している( 「産経新聞」・2月2日付)。

 首相は昨年10月に出されたアメリカの超党派の対日安保政策提言文書を再三読んでいるとの報道もあり(「産経新聞」・1月31日 付)、有事法制整備への踏み込みは、ブッシュ新政権への森首相の新ガイドライン路線推進のシグナルと言えるであろう。

 他方、国内的な要因としては、KSD疑惑や機密費問題など受け身に立たされている森首相としては、「どうせなら、政策面 で論戦 したい」、また野党を分断できる新たな長期的な課題を新たに掲げて、夏の参院選挙以降に延命を図ろうという意図もあろう。その意味では、不確定要素が多く、この問題がどう展開するのかは、支配層内の軋轢とともに、まさに有事法制に反対する国民運動との闘いの問題である。

 しかし、実務レベルでは、斉藤防衛庁長官が2月5日に「内閣官房を中心に、関係省庁が連携をとりながら法案化を詰め、研究を重ねていく」との方針を公言しており、防衛庁では昨年8月から発足 している局長らでつくる有事法制検討会の活動を活発化させ、内閣では有事法制の整備にむけて、安全保障会議の下に局長レベルの検討会議を設置するとともに、課長クラスの実務者会議を設置することも検討している。

 この有事法制問題は「まだ先のこと」、「自民党内部でも、与党間でもゴタゴタする」などと傍観することは許されないと考える。

 施政方針演説では、冒頭部分で下記のことを述べていることを軽視するべきではない――

 「既存の施策の発想を超えて、過去との訣別による改革を避けて通ることはできません。今こそ、明治維新、戦後改革に次ぐ、第三の抜本的改革を実行し、日本の新生を図っていくことが必要です」。

 まさに、新ガイドライン路線のはらんでいる「戦後総決算」とどう対決するのかが問われていると言って過言ではない。われわれは傍観者となってはならないのである。

               松尾 高志
2001.2.6記

 

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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