自衛隊参戦と調整委員会設置(01/11/15)

 「対テロ戦争参加法」が成立した10月29日、ホワイトハウス は次のような簡潔な声明を発出した――

「大統領は、日本が対テロ 戦争においてサーベーランス(監視)、輸送および直接戦闘行動以 外のその他の支援のために軍隊(forces)を提供するとの本日の日 本の措置を歓迎した。日本はすでに外交、情報シェアリング(共有) 、人道支援で積極的な役割を演じている」(全文)。

 この措置をとるための日米の外交・軍事の実務者による協議の場 が11月1日に新たに設定された。この「調整メカニズム」は別掲 の図(「読売新聞」11月2日付による)のとおりである。

 これは二つの構成要素からなっており、一つは上部の外交・防衛 ・軍事のポリティコ・ミリタリー協議の場、もう一つは下部のミリ タリー・トゥ・ミリタリーの軍レベルの協議の場である。注目され ることは上部の「調整委員会」(局長級)、その下にある「調整委 員会ワーキンググループ」(課長級)に、ともに米軍、自衛隊とと もに内閣官房のメンバーが加わっていることである。これは外務省、 防衛庁・自衛隊以外の省庁所管にかかわる事項に対処することを想 定していることを意味している。「対テロ戦争参加法」で関係省庁 の協力が規定されていることを受けたものである。

 下部の軍レベルの調整については、海外でのオペレーションと国 内でのオペレーションに分けて調整することとし、海外のオペレー ションについては米太平洋軍(パシフィックコマンド・司令部=ハ ワイ)と米中央軍(セントラルコマンド・司令部=フロリダ)との 調整をすることとしている。中央軍とは、中東・中央アジア地域を その地理的責任範囲とする統合軍であり、フランクス中央軍司令官 が今回のアフガニスタン攻撃作戦を指揮している。

 この調整の割り振りはディエゴガルシア及びその近傍の海空域ま では米太平洋軍との調整、それより先、コンバット・ゾーン内は米 中央軍との調整としたのであろう。報道によれば、防衛庁は、自衛 隊の連絡幕僚3人(陸・海・空各幕から1佐クラスを各1人)と内 局のシビリアン・課長級数人を11月5日からの週にもハワイの米 太平洋軍司令部に派遣することを決め、連絡幕僚は同司令部に長期 派遣することにした(「朝日新聞」11月2日付夕刊)。

 そして、これにもとづく「調整委員会」(局長級)の第1回の会 合が翌11月2日、外務省で開催された。委員会には日本側から外 務省の藤崎北米局長、防衛庁の北原運用局長らが、米側からはクリ スチャンソン駐日米公使、ラフルアー米国務副次官補、ブルックス 米国防副次官補らが参加した。ヒューイ在日米軍副司令官をはじめ とする日米の軍部からも代表者が、また内閣官房のスタッフも参加 した。

 ここで日本側から、自衛隊による米軍支援の具体的内容を定める 基本計画の原案を説明した。米側はこれらは「米軍の活動を確固た るものにするために大変に有益だ」と評価したと伝えられている。 また米側は「多国間の協力支援はその国が自己完結的な能力で参加 してもらうことが非常に重要だ」と述べ、活動中の自衛隊に対する 攻撃対処は自衛隊が実施することを求めた。

 これで、自衛隊の支援の大筋が公式に了承されたこととなり、今 後は実務者間の調整が実施されることとなった。戦時での初めての 「調整機構」が機能し、戦時下での初めての日米共同作戦が実施さ れることとなったのである。

 重要なことは、これらの調整メカニズムが11月1日に東京で開 催された既存の日米安保事務レベル協議の審議官級協議(ミニSS C)という協議体で決定されたということである。 このことの意味することは、今回の「対テロ戦争参加法」の国際法 上の根拠がどこにあるのかについて小泉内閣は国会の審議で曖昧な まま押し通したが、実は日米同盟=日米安保体制にあることを事実 で示したということである。このミニSSCという協議体は日米安 保条約の運用のために設置されたものであり、今回、そのシステム を稼働させたことがこのことを明確に示している。

 「日米安保共同宣言」・「新ガイドライン」によって再定義され た現在の日米安保体制は、かつてのような日米安保条約そのものに のみ根拠をおくものではなくなっている。が、日米安保条約の存続 に基礎をおいていることもまた確かなことなのである。したがって、 今回の「対テロ戦争」への自衛隊参戦は日米同盟にもとづく「同盟 としての参戦」なのである。

 われわれは今、戦争のメカニズムが現実のこととして稼働してい るのだということを銘記しなければならない。

 

01/11/16記
松尾 高志

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
平和新聞の購読希望者は03(3451)6377までお問い合わせください。


HOME | 安保ウォッチング | 平和のための戦争展 | 鎌倉市平和委員会 | 平和資料 | ゲストブック

peace-kanagawa.org
since 1999.5.7