日米軍事調整機構の問題点(01/10/15)

 すでに「戦争」(ブッシュ米大統領の称する「これまでとは違っ た種類の戦争」)は始まっており、現在、作戦は実施中であるとの 認識が必要である。

 アメリカ合衆国史上、第126番目の軍事行動が発動されている のである。米国はこれまで125回の軍事行動を実施したが、その うち「宣戦布告」したのはただの5回だけである。今回の戦争もま た宣戦布告なき戦争に突入しているのである。

 全体の指揮は米大統領を中心とした国家安全保障会議がとってお り、軍事、諜報、法執行、外交、経済などの諸戦線での指揮・調整 を実施している。問題はこの戦争の中枢である軍事部門での司令部 はどこで、司令官は誰かである。今回はこのことまで秘匿するとい う特殊な戦争となっている。軍の指揮系統は米大統領→国防長官→ 統合軍司令官(CINC)なのだが、これが発表になっていない。作戦 名はホームランド・ディフェンス(国内テロ対処中心)は「オペレ ーション・ノーブル・イーグル(高貴な鷲)」であり、海外展開は 「オペレーション・エンデュアリング・フリーダム(不朽の自由)」 と名付けられているのだから、その作戦の司令官は任命されている はずである。その司令官、司令部ともに発表されていない。確かに 「新しい戦争」である。それ故にそうであるかどうかは確定的に判 断できないが、攻撃作戦については、これまでの経験則から推測す れば、フランクス陸軍大将を司令官とした米中央軍(セントラルコ マンド――司令部=フロリダ)が指揮をとることになる。

 こうした「戦争」に小泉内閣は新規立法措置を中心として、自衛 隊の参戦態勢を整えようと現在、政治戦・情報戦を実施中である。

 ここで自衛隊が参戦するにあたって避けられない重要問題がある。 それは日米の指揮・調整機構をどうするのか、という問題である。

 米軍はすでに戦争状態にある。日本で立法措置が出来、現実に兵 站戦を中心として自衛隊が参戦するとすれば、当然、米軍と自衛隊 の作戦・調整機構が必要となる。自衛隊が勝手に、米軍の所要(必 要とする物資・役務の内容とその量、その時期、場所)を決めて、 勝手に作戦行動するわけにはいかないことは誰にでも分かることで ある。オペレーションの主体は米軍であって、そのオペレーション の必要に応じて、兵站部門に所要が要求され、それに応じるのが自 衛隊の作戦行動なのだからである。防衛庁が最後まで新規立法より も周辺事態法の拡大適用にこだわった理由の一つはここにあるので はないだろうか。周辺事態についてはすでに調整メカニズムは決定 されているからである。新規立法の下でこれをいかに構築するかが、 現在、課題となっているはずである。

 この点で、9月21日(金)から23日(日)までの間、自衛隊 のトップ=竹河内統合幕僚会議議長が急遽、ハワイに出張したこと が重要である。訪問先は米太平洋軍司令部「等」である。

 今回のオペレーションで米太平洋軍の役割は後方地域作戦(リア ・エリア・オペレーション)であろう。これに自衛隊は作戦協力す るのであるから、作戦および作戦・調整をどうするのかを、ハワイ で協議してきたのである。統合幕僚会議議長の随行者は発表されて いないが、担当幕僚であったろう。米軍との間の作戦・指揮調整機 関の設置とその場所、国内の関係省庁との連絡調整の場の構築が必 要である。また連絡幕僚をどこに配置することになるのか(ペンタ ゴンとホノルル、それだけか)。  NATOには常設の指揮機構が存在するのだから、こうした問題はな い。戦争をしないことを国のプリンシプルとしている国家である日 本には、そのような指揮・調整機構は常設されていないのである。

 小泉首相は「自主的、主体的に」支援し、協力すると力説するが、 軍事作戦では米軍が「主体」である。オペレーションの指揮権は当 然ながら米軍が握っている。自衛隊の参戦はいくら「自主的、主体 的」と言ったところで、実態は米軍の指揮下に入ることとなること は自明である(建前=法形式は別だが)。ロジカルに思考すればこ れが当然の帰結である。

 

01/10/5記
松尾 高志

この記事は平和委員会が発行する平和新聞(月3回発行)に掲載されています。
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