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「調整メカニズム」の分析 (00/9/25)新ガイドライン合意から3年、旧ガイドラインから22年、そし て「三矢研究」から37年、ついに米軍と自衛隊との間の「日米共 同調整所」の設置が決まった。 これは9月11日、ニューヨークで開催された日米安保協議委員 会(2+2)後、発表されたものである。 日米安保協議委員会の「共同発表」文は次のように述べている― ―「日本及び米国は、日米防衛協力のための指針の実施面 での進展 において、同盟関係における新たな成果を達成した。とりわけ、4 閣僚は、計画についての検討作業の(英文は「in bilateral planning」となっており、「共同計画策定作業における」である) 進展及び緊急事態(英文は「contingencies」=複数である)にお いて二国間のより良い調整を確保する調整メカニズムの設置を歓迎 した」。 ここでは「共同作戦計画/相互協力計画策定作業の進展」と「調 整メカニズムの設置」の二つが「歓迎」されているのである。一言 コメントしておけば、「調整メカニズム」は「2+2」の会議の時 点ではすでに設置されていたのであり、それを委員会が「歓迎した」 ということである。「調整メカニズム」の決定者は安保協議委員会 ではない、ということである。オーソライズはしたのであるが・・ ・。 新ガイドラインによれば、「調整メカニズム」は「平素から構築」 するもので(それが今回の措置である)、機能は「日本に対する武 力攻撃及び周辺事態に際して各々が行う活動の調整を行う」もので あり、それは「日本有事/周辺事態」の時点で機能するのである。 先に設置された「包括的メカニズム」は平素から機能しているであ り、「共同作戦計画/相互協力計画」の策定はこのメカニズムで作 業が進められているのである。 で、「調整メカニズム」であるが、それは発表されたところによ ると別掲の一枚のチャート(図)である。日米安保協議委員会後に 発表された「共同発表」(和文)は「仮訳」となっており、正文は 英文であることが分かる。英語版は米国務省のホームページで公表 されているが、「調整メカニズム」のチャートの英語版は本文執筆 時点では、日本政府からも公表されていないことを付言しておく。 このチャートから判断できることは、「調整メカニズム」は二つ の構成要素から成り立っているということである。それは上部の三 つの機関と、下部の一つの機関である。 下部の「日米共同調整所」は米軍と自衛隊との間の調整機関である。いいかえれば、これは純粋に軍部レベルの機関である。構成メ ンバーはすべて軍人/制服組である。チャートでは、上部の三つの 機関の「下」に置かれているので、一見すると、下部機構のように 思わされるが、上下の間を結んでいるのは「双方向の矢印」である。 上下関係ではないことに留意する必要があろう。上下の指揮命令関 係ではなく、調整関係なのである。これこそが、「事」が起こった 場合に米軍と自衛隊が作戦行動する際に機能する、事実上の「合同 司令部」なのである。日米間の指揮権の問題がここにあるが、ここ ではその問題の指摘にとどめておく。 上部に記載されている三つの機関はワンセットであり、中心は2 段目の「合同調整グループ(ガイドライン・タスク・フォース/運 営委員会)」である。ここですべて実務的なことは処理される。メ ンバーは軍人/制服組とシビリアン/背広組とそして他の省庁の官 僚である。軍民(シビル・ミリタリー)混合のチームである。ここ で、米軍と自衛隊=軍が展開するオペレーション(作戦行動)にと もなって必要となる行政措置をとるのである。 その行政措置の第一義的な責任をとる、決裁するのが上部の二つ の機関――「日米合同委員会」と「日米政策委員会」である。この二つの機関の決裁事項の区分けは日米地位 協定にかかわるものか、 それ以外のものかという点にある。 日米地位協定の実施に関する事項を決裁するのが「日米合同委員会」である。すでに存在している「日米共同委員会」を、この「調 整メカニズム」に組み入れたのである。 もう一つの機関「日米政策委員会」は地位協定の実施以外の事項 すべてを決裁する。メンバーは「合同調整グループ」の上司である (局長級)。ここには米側からは国務省と国防総省の連絡官が出席 することになっているところが「合同調整グループ」とのもう一つの違いである。決裁の事項であるが、地位 協定では規定されていないものとは、「周辺事態」にあっては輸送、医療協力などがあげられるであろう。 こうしたことの結果は「日本有事」の場合の「米軍の行動にかかわる有事法制」を日本政府として制定しなければならないという課題が公然とまた公式に記載されたということを意味している。 全体として、このチャートは上下を逆にして見ると、本質がすっ きりと浮かびでてくるということができる。「有事」には「軍」が 「戦う」ことがメインである。軍を中心として事態は推移する。そ のオペレーションを円滑に展開できるようにサポートするのが上部の三つの機関なのである。まさに「戦争遂行可能な国家」システムが稼働する「メカニズム」であるといえよう。 最後に付言すれば、この「メカニズム」が立ち上がり、機能を開 始するのは、「事」(「日本有事」/「周辺事態」)が起こったと 認定される以前であろうということである。そのことのひとつのヒントは「内閣安全保障・危機管理室」の存在である。この行政組織 は「平時」と「有事」の間に機能するものだからである。事態は実 際はある時突然に「有事」となることはない。「平時」と「有事」 の間にはグレー・ゾーンが存在する。このグレーゾーンの適切と判 断された時点で「調整メカニズム」が立ち上げられるのである。もう一つのヒントは「三矢研究」である。この時、「作戦調整所」の 設置の時期は日米安保条約第5条の「発動を必要とするおそれのある事態となった場合」とされていた。旧ガイドラインでも「おそれ」 がある時期とは、自衛隊法上の「防衛出動待機命令」以前の時点で あると、国会で答弁されていた。ガイドラインでは「おそれ」がある時期から日米双方が「共通 の段階」で「作戦準備」を実施するこ とと規定している。したがって、「調整メカニズム」を立ち上げる 時期は「事」の起こる以前であろう。 「調整メカニズム」の設置は、日本がアメリカ合衆国が戦う「戦争」に日本政府をあげて協力し、ともに「戦う」という「戦争遂行可能な国家」システムの構築の重要なステップとなるものである。 こうした「新ガイドライン路線」の実行は、時代の推移をみれば、 そして日本人の進むべき方向からすれば、アナクロニズムというほかはない。とりわけアジア・太平洋地域の人々と「日米軍事同盟」の強化という姿勢で向き合うことは間違っているのである。
松尾 高志
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