変化する米海軍演習 (00/7/5)

 ハワイ諸島とその周辺海域で実施されている米第3艦隊主催の多国籍海軍演習「リムパック2000」は今回初めて、「人道支援」 演習を「ストロング・エンジェル」と名付けて、6月10日から15日まで行なった。

 これは、民族紛争が発生して、それに「人道支援」の多国籍軍が介入し、難民の移送、難民キャンプの設営を行なうというもの。 「シナリオ」は、ハワイ島北部に「オレンジ」国(悪玉)、南部に 「グリーン国」(善玉 )が相対しており、「オレンジ国」が国内の少数民族「グリーン人」を迫害、「グリーン国」に対してテロ攻撃などを行なう。これに対して国連の要請による多国籍軍が「人道」 介入して、「オレンジ国」に強襲上陸して、少数民族の難民を保護し、「グリーン国」内に移送して、難民キャンプを設営し、医療活動などの「人道支援」を行なうとなっている。この中では、軍・民 間の通信システム、医療情報のネットワーク構築などがテストされることとされている。

 この「作戦」の指揮は、洋上の第3艦隊の旗艦「コロナド」の艦内に立ち上げられた「シビル・ミリタリー・オペレーションズ・セ ンター(CMOC)」がとる。

 この演習の特徴のひとつは、海軍・海兵隊のみならず、非政府組織(NGO)が参加していることである。このため、インターネット上に「ストロング・エンジェル」というホームページを立ち上げている。これに参加しているのは、赤十字国際委員会、アメリカ赤十 字、ユニセフ、UNHCR、世界食糧機構(WFP)などであり、米国防総省のDARPA、国防長官オフィス(OSD)も肩を並べている。この演習には最新の東ティモールの経験も活かされるという。

 米軍以外からは、カナダ、オーストラリアの軍医が参加し、海上自衛隊の軍医がオブザーバーとして「コロナド」艦上の指揮所に派遣された。

 「6月18日以降に行なわれる実戦型の洋上演習も、少数民族の排除を狙う敵国軍に、多国籍軍が攻撃を展開するシナリオ」(「読売新聞」6月11日付)であるという。強襲上陸作戦それ自体には海上自衛隊は参加しないが、それをバックアップする洋上作戦=対潜水艦戦には「日米共同訓練」として参加する(「朝日新聞」6月 5日付)。

 アメリカ海軍は演習を新しい国際軍事戦略環境に適応すべく、こうした多国籍軍による「人道」介入の演習にシフトさせており、タイで5月に実施した米タイ共同軍事演習「コブラ・ゴールド」でも初めて「国連の委任を受けての平和執行作戦」を、「仮想の2国間で起きた紛争に米・タイ合同軍が割って入り停戦させる想定」( 「朝日新聞」6月10日付)で実施した。

 米軍が今、PKOや人道援助を軸に、アジア・太平洋地域の2国間演習を一つに束ねる「チーム・チャレンジ」構想を進めている(同) ことの一環である。

 日本政府は現在、多国籍軍にも、国連の平和執行部隊にも参加することは法制上、できないとの見解である。しかし、自民・公明・ 保守の連立政権はこうした「人道作戦」への自衛隊の参加にむけて動きだすことは必至である。こうした変化に注視する必要があろう。

 

松尾 高志
2000.6.27記

 

 

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